大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(ラ)784号 決定

抗告人は、本件競売申立建物(以下本件建物という。)は、先に競売手続の開始された東京地方裁判所昭和三十年(ケ)第三九四号不動産競売申立事件の競売建物(以下別件建物という。)と重複していると主張するので検するに、証拠によれば、本件建物の登記簿上の表示は、

墨田区吾嬬町西七丁目一番地

一、木造瓦葺二階建居宅一棟

建坪十三坪 二階十六坪の内北側

家屋番号同町一番ノ二

一、木造瓦葺二階建居宅一棟

建坪九坪七合五勺 二階十二坪

となつているが、それは先に昭和二十八年三月七日、附属建物二棟と併せて伊藤広兼のため所有権保存登記がなされ、その後附属建物二棟を分割し、次いで残りの建物の一部を分割してそれぞれ他の登記用紙に移した結果、右のような表示となつたことが疎明せられ、また前記別件建物の表示は、登記簿上

東京都墨田区吾嬬町西七丁目一番地

家屋番号同町一番の八

一、木造モルタル塗瓦葺二階建店舗兼居宅一棟

建坪三十三坪 二階三十二坪

となつていて、これについては二十九年八月十二日伊藤広兼のため所有権保存登記がなされていることが疎明される。

右各登記簿の表示を比較すれば、両者は登記用紙を異にして登記れさている外に、建物の構造、建坪を著しく異にし、明らかに別個の建物であるかのような観を呈しているけれども、証拠を綜合すれば、右別件建物は、本件建物と、その西にこれと接近して建てられた別棟建物とを併せて、一棟の建物のように装つて登記したものであり、外観も見ようによつては一見一棟の建物のように見えるけれども、実は東西に並列する二棟の建物であつて、その内東側にある一棟は本件建物と同一建物であること、本件建物の状況は、保存登記の当初から現在まで内部の多少の造作替を除き特段の変化なく、建物としての存在を失わせ又はその同一性を欠くに至るような改築大改造等はなされていないこと、及び右別件建物の登記は本件建物と他の建物との合併による変更登記ではなく、本件建物の登記用紙はそのまま存置し、これとは別の全く新たな建物として新登記用紙に保存登記をした違法なものであることが一応認められるから、本件競売申立は前記別件の競売建物の東側の部分について重複してなされたことになる。そうして証拠によれば、右別件の競売開始決定の日は昭和三十年三月十五日、本件競売開始決定の日は昭和三十一年五月二十二日であることが明らかであり、裁判所は一旦競売開始の決定をなした不動産については重ねて競売開始決定をすることはできないのが本則であるから、次に、後になされた本件競売開始決定及びそれ以後の競売手続の効力について検討する。

証拠を綜合すれば、本件建物については、競売申立債権者のための抵当権設定登記は昭和二十八年三月七日即ち保存登記の日と同日になされ、競売申立の日は昭和三十一年五月二十一日であつて、同月二十二日競売開始決定があり、同年六月六日右競売申立が登記簿に記入されたこと、また前記別件建物については、昭和二十九年八月十二日保存登記があつて、後同年十月十五日沢田重男のため第一順位の抵当権設定登記があり、その後昭和三十年三月十五日同人の申立により競売開始決定があり、同月十八日その旨登記簿に記入されたことが疏明される。

してみると、前記別件建物について昭和二十九年八月十二日なされた前記保存登記は、少なくとも、本件建物に関する限り現に登記のある建物について二重になされた登記であるから無効であり、これが有効であることを前提としてなされた沢田重男のための抵当権設定登記及び右抵当権に基く競売申立の登記もまた無効であり、同人の抵当権はこれを本件競売申立債権者に対抗することができず、適法な抵当権設定登記を経た本件競売申立債権者の申立に基く本件競売手続は、右無効の競売申立登記によつて聊かも妨げられることはない。従つて本件競売開始決定は、同一建物につき先に沢田重男の申立に基きなされた競売開始決定よりも後になされたものであるけれども適法であり、これに基いて手続を続行し、本件物件の競落を許可した原決定を違法ということはできない。

その他記録を精査しても原決定にはこれを取り消す事由となるべき違法の点はないとして、これを棄却した。

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